『傾聴』
傾聴スキルの向上について
今回は、久しぶりに会話方式にしてみました。
Aさん:今日は、心理カウンセリングにおける「傾聴」のスキルについてお話をしますね。その前に、Bさん、ラポールって聞いたことありますか。
Bさん:なんか、人の話を聴くときに、相手との信頼関係がどうとかいうやつですよね。
A:そうそう。色んな場面で使うよね。初対面の人と話をするときや、まだ対人関係で、それほど親しくない間柄の時なんか。「ラポールとれてないわ。」とか。
B:そんな頻繁にも聞かないですけどね。確か、相手の話をよく聴こうとしたら、まずは信頼関係を築かないと、本音部分の話も聴けないし、ってやつですよね。
A:そうそう。心理カウンセリングでは、来談者中心療法っていうのがあって、「傾聴」という技法があるんだけど、これを実践することにより、ラポールが生まれて、クライエントさんは、心理カウンセラーに対して、「もっとわかってもらいたい」「この人ならわかってくれるはずだ」と大きな期待感が生まれ、カウンセリングもさくさく進むし、クライエントさん自身の自己洞察も深まると。
B:時間に余裕ないときは、さくさく話してほしいですもんね。
こちらから話しても、全然話ししてくれなかったり、嘘ばっかつかれると、こっちが自信を失っちゃうし。
ところで、ラポールって、直訳すればどういう意味ですか。
A:日本語では、「信頼関係」、フランス語では「橋を架ける」という意味なんだ。
そして今から話す「傾聴」については、よく耳にするのが、漢字の成り立ちとか興味深いよね。
B:あ、漢字を分解すると、耳と目と心を傾けて、前のめりで相手の話を聴くってやつですよね。
A:そうそう。心理カウンセリングの世界でも、基本となる心理療法で、1940年代アメリカの有名な心理学者のカール・ロジャースさんが提唱した「来談者中心療法」というのがあってね。
それまでは心理療法は精神科医や精神分析医などの医者にしか許されてなかったんだ。あくまで、患者(ペイシェント)に対して医者が、心理学の知識や技術を用いて解釈や指示を与えるという。
B:医師>患者の上下関係があったということですかね。
A:そうそう。でもカール・ロジャースのおかげで、心理学者にも、治療行為の道が開かれたんだ。
「来談者中心療法」は、来談者(クライエントさん)に対して、平等の立場で接して、指示も解釈も行わないといったスタンスなんだ。
B:クライエントさんに対して、指示をしないってことですか。
A:そう。来談者中心療法の基本的考え方は、クライエントさんが、どう感じ、何が問題で、どのようにしたらよいのかなどの答えは、心理カウンセラーがクライエントさんに対して、真実さ、受容、共感的理解を示し、クライエントさんの考えや気持ちを分かち合い、信頼関係を築くことで、クライエントさん自身が自ら気付き成長していく、そういう潜在能力を解放していくんだというようなスタンスなんだね。
B:答えは自分の中にあるってことですか。
A:そのとおり。今日はその来談者中心療法で用いられる「傾聴」という技法について一部紹介するね。
B:お願いします。
A:まず、基本的な傾聴技法として、非言語による「かかわり行動」と言語による「かかわり技法」ってのがある。
B:急に話が難しくなってきそうですね。
A:ヒトは、ワンペーパーしか文字読めない説ってのがあるんだけどね。とても1枚、2枚じゃ収まらなくて。どれだけやってもね。ふー。
B:とりあえず、まだ、本題入ってないようなんでお願いします。
A:「かかわり行動」ってのは、非言語によるメッセージを無意識的に相手に伝える効果があって、コミュニケーションでは、よくノンバーバル・コミュニケーションって言葉を使うんだけど、通じるものがあるよね。
「かかわり行動」には、4つあるんだけど、まず1つ目は、
① 視線
○ 上半身を見守る感じで温かい視線をクライエントさんに送り、「話を聴いてくれているな」と相手に感じてもらうこと
× 凝視したり、視線をそらせたり、クライエントさんの視線の先に合わせたりしない
B:時計ちらちら見たり、スマホ見たりはもってのほかってことですね。
A:次に、2つ目は、
② 身振りや表情
○ クライエントさんに対してやや前傾気味に、穏やかなほほ笑みやゆったり椅子に腰かけるなど
○ クライエントさんの表情や身振り、姿勢に心理カウンセラーがさりげなく合わせる「ミラーリング」を行い、心の動きに合わせて鏡のようにふるまう
× 腕組み、足組み、見下ろす感じ
× 表面的な言葉のやり取りのみ注意を向ける
B:ミラーリングって聞いたことあります。なんか、私が話をしていたら、相手が同じ仕草を真似て来て、、、あと、すごい大げさな表情されて、かえってひいちゃったことある。
A:あなたみたいな人にやると、逆効果になるから注意が必要だね。
あと3つ目は、
③ 声の調子
○ 話の内容に合わせて声の調子を変える
○ 相手の声のトーンに合わせる
× 声の調子が一定で機械的
B:話の内容に合わないすっとんきょうな声出されると、興ざめですもんね。
A:君自身が気を付けたほうがいいよ。そういうの。
最後の4つ目は、
④ 話の内容に注意を集中
○ 話の流れを遮らない
○ 話の内容に集中する
× 全然違う話をする
× 話を途中で遮る
B:傾聴の極意は、受容と共感ですね。
A:それでいいです。次は、「かかわり技法」について説明するね。
「かかわり行動」によって、クライエントさんの心の準備が整うと、次はクライエントさんの内的世界を共有して、クライエントさん自身の洞察が深まるように言葉でアプローチをかけていきます。
全部で6つの技法を紹介します。
まず1つ目は、
① 相手の沈黙に合わせて、カウンセラーも沈黙する
これは、クライエントさんが自己との対話をしている大切な時間なんだ。
B:沈黙が怖いです。何か違う話題を探してしまう。
A:それ、絶対ダメなやつね。2つ目は、
② あいづちをうつ
B:なんだ、簡単なことですね。
A:あいづちも、声を出したり出さないうなずきとか、バリエーションも豊かな方がいい。
間違っても、「へえー、それで」を繰り返すと、「つまらない話はとっとと終われ」という否定的なメッセージを受け取ってしまうかもしれないから、聞く側の人間は、急かしたりしないようにね。
3つ目は、
③ くり返し(オウム返しやバックトラッキングともいう)
これは、自分が発した言葉がカウンセラーからそのまま伝え返されたときに、クライエントさんの内面が整理できたり、自己洞察が深まったりして、自己の盲点に気付くことも期待できる。
B:盲点!ジョハリの窓が開くんですかね。誰か、私の話を聴いてください!
A:もう少し、私の話を聴いてください。
次に4つ目は、
④ 相手の気持ちを汲む
これは、③に似ているけれど、クライエントさんがカウンセリング中に感じたり、表現した気持ちや欲求については、カウンセラーが評価や偏見を加えることなく、そのまま受け取って、そのままの言葉で伝え返す技法なんだ。
クライエントさんが使う微妙なニュアンスや言い回しは、勝手に変えたりしてはいけない。
感情表現が難しいクライエントさんに対しては、カウンセラーが気持ちを察して、感情を反映した言葉がけで気持ちを確認していくことも、時に大切なことなんだ。
B:心の柔らかいところに、寄り添ってあげる感じですかね。
A:そうそう。あと少し。5つ目は、
⑤ 要約
これは、クライエントさんが、言いたい表現が見つからず、また、まわりくどい表現をするようなときに、カウンセラーがクライエントさんの表現から、最も伝えたいと感じる部分を感じ取り、クライエントさんの考え方や気持ちの意味を変えることなく伝え返すことなんだ。
B:これも③、④に通じるところがありますね。
A:最後、いよいよクライマックスに近づいてきたぞ。
6つ目は、
⑥ クライエントさんの考えや気持ちに焦点を当てて質問する技法
質問例
「そのあたり、詳しく聴かせていただけますか。」
「そう考えると、どのような気持ちになりますか。」
「そんな気持ちになるのは、どのようなお考えからですか。」
これはドアオープナーの言葉と言われている。カウンセリングの途中、クライエントさんの話に共感し、伝え返した後に、ちょいちょい質問をしてその次の対話を促していく。
B:ただ聞いて、繰り返して伝え返すだけじゃなかったんですね。安心しました!
A:とにかく気持ちや考え方にフォーカスして、クライエントさんが内部の洞察を深められるように話を展開させて、落としどころを探す。
B:なるほど、また、友人や職場でコミュニケーションを図るときの参考にします。
近い距離で詰めた話をすることが、元来苦手なもので、、、距離感てものがね、、、いまいち、、、
A:でもね、深刻な話になってくるとね、相談を受けているうちに、私的な感情が生まれてしまう危険性もあってね。「転移」とか「逆転移」とかいうんだけどね。
B:相談しているうちに、色恋沙汰に発展するってアレですか?
A:そういうケースもある。クライエントさんの例えばお母さんに「愛されたい」っていう未完了な思いが、カウンセラーに向けられてしまうことがある。敵意とか好意がカウンセラーに投影されてしまうんだね。
B:仕組みはよく分かりませんが、ありがちですよね。
A:クライエントさんからカウンセラーに対する「転移」は成長段階の一過程としてチャンスとしてとれるんだけど、、、
B:カウンセラーからクライエントさんさんへのはダメってことですね、、、
A:「逆転移」っていって、私的な感情は、治療に悪影響を及ぼすと考えられているんだ。
B:ヒトとヒトって、難しいんですね、、、
A:でも生きている限り、一人では絶対に生きていけないからね。誰かに頼って、頼られて、それが生きている意味みたいなものだから、と私は思うけどね。
B:そうなんですね。また、時間あるんで、ゆっくり考えてみます。
🌕普段、何気に外出してる人が、閉じこもると、運動不足からの体調不良はもとより、何気に人と話をするという行為そのものが、いかにストレス発散になっていたか。
一月経てば、人の心が荒んで気持ちや行動に変化が出て当然、、、
メンタルヘルスは、まず家族単位から、、、足元見てメンバーお互いに、今こそ話をよく聴き、思い遣りが必要、、、
蝕むんだもの、、、
皆んな誰かのメンターであり、
皆んな誰かの心の師であり、
皆んな誰かのカウンセラー、、、